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2009.10.1「福祉用具の日」協賛イベント 福祉用具レンタルサービスの質の向上に期待する人々の集い
本年8月、平成24年度の介護報酬改定に向けて、厚生労働省による「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」がスタートした。その審議結果は今後の福祉用具レンタルサービスの行方に多大な影響を及ぼすだろう。今、まさに分岐点に立たされている福祉用具業界。しかし、関係者の間では、他の介護サービスとは違い、個別援助計画の作成が義務付けられていないなど、「仕組みの未整備」が問題視されている。そこで「福祉用具の日」にあたり、関係各界を代表する識者の方々にさまざまな視点から、大いに語っていただいた。
 
基調講演 福祉用具個別援助計画の意義と実用性

シンポジウムに先立ち、『ふくせん』の「福祉用具個別援助計画書標準様式」開発の責任者、東畠氏が基調講演を行った。

 
福祉用具における個別援助計画

ケアプランに掲げられた目標を実現するには、どのような方法で、どのように援助をしていくかを方向付ける個別援助計画が非常に大きな意味を持つ。介護保険制度上、訪問入浴介護と福祉用具貸与以外のサービスについては個別援助計画の作成が義務付けられている。なぜ、福祉用具貸与については、義務付けられていないのか、介護保険制度スタート時から疑問を抱いていたと東畠氏は言う。

 「おそらく、福祉用具の提供に関しては他の介護サービスとは違うと考えられていたのではないでしょうか。福祉用具を的確かつ迅速に利用者に届けることが第一であって、それを何のために、どのように使うのかは、あまり重要視されていなかったのかもしれません。」

 
個別援助計画の意義
東畠弘子(ひがしはた・ひろこ)氏
当協会理事。福祉用具と介護経営分野の研究者/福祉ジャーナリスト。
「福祉用具専門相談員から個別援助計画書を作成できるリーダー的な人材がどんどん生まれることを期待しています」

シルバーサービス振興会の調査では、福祉用具の選定は、「ケアマネジャーと福祉用具専門相談員が相談して行う」のがもっとも多い。ここに、福祉用具についての専門知識の必要性が表れている。機種の選定時に個別援助計画書を作成することで、その利用者の状況を把握し目標を理解する、それがその後のモニタリングを意味あるものとし、利用者の満足度にもつながるのだ。

すでに集まっている『ふくせん』の標準様式の使用実例をみると、その内容にかなり差がみられるという。これにより「利用者の何をみているか。また、ケアプランを理解しているかどうか。ケアマネジャーとの連携の度合いもわかりますね」(東畠氏)

福祉用具個別援助計画書によって、サービスの記録を可視化することは、関連専門職や利用者からの信頼を得るという点で役立つとともに、福祉用具専門相談員のスキルアップにもなるのである。

 

 
シンポジウム 福祉用具レンタルサービスの質の向上に不可欠なもの
 
利用者にわかる価値・情報の提供
渡邉慎一(わたなべ・しんいち)氏
横浜市総合リハビリテーションセンター医療部医学・作業療法課長。
「難しいのは個々の生活を対象としているところ。個別性・多様性が極めて高い生活の中で使い続けるものだ、という点です」 秋山由美子(あきやま・ゆみこ)氏
(福)世田谷区社会福祉事業団理事長。
平成21年3月まで世田谷区に勤務。
「使ってよかったと思ってもらえるような福祉用具の導入が非常に重要です」

「利用者にとって福祉用具の価値とは、費用対効果です」と渡邉氏。この場合の効果には、自立支援の効果や介護負担の軽減も入る。サービスの効果がでてい るのかということ、人的サービスが正しく機能しているのかということは、「福祉用具における保険給付の在り方検討会」の検討課題のひとつにもなっている。

人的サービスでは、@必要性の提示、A効果の発揮、B効果の継続、この3点がポイントだ。共通しているのは“情報提供”。「福祉用具についての情報が十分でなければ、人的サービスも物的サービスも意味をなさない。そもそも、その用具が開発された意図はどこにあるのかを知ること。構造面や安全性、使用方法などを利用者にきちんと伝えなければなりません」(渡邉氏)。

使用トラブル等についての情報が事業者、利用者ともに不足していると指摘したのは秋山氏。消費者安全法の施行により、消費者事故等に関する情報の開示について、行政の義務は厳しくなったが、まだその仕組みは十分とはいえない。事故や“ヒヤリハット”の情報は、行政サイドで集約して衆知を図るべきだが、それができていないのが現状。「それは行政の問題だけでなく、事業者の方々の問題でもあります。業界全体で解決しなければならない」(秋山氏)のである。どのようなかたちでも、情報が増えれば増えただけ、安全に対する意識は育つ。

工学的基準と臨床基準を総合的に評価する『福祉用具評価システム』も始まった。情報提供がされれば、それを見極める知識・技量も必要になる。専門職としては使いこなすための知識を身につけなければ、といったところだろうか。

 
現行制度の盲点 居住形施設への貸与

助川氏が施設長を務める特別養護老人ホームは“居住”系施設であるのにもかかわらず、福祉用具のレンタルはできない。これは大きな疑問と問題を含んでいる。

助川氏によると、今や先進国では“ノーリフト”が常識。一方、多くの部分をマンパワーに頼っているのが日本の現状だ。これが腰痛は介護職員の職業病といわれている一因かもしれない。 

「レンタルが可能になれば“ノーリフト”の環境が充実し、介護負担軽減につながる。介
護職員も非常に助かるはず」(助川氏)。

借り換えのきくレンタルであれば、普及の度合いはまったく違ってくるだろう。施設におけるレンタルが実現すれば、福祉用具専門相談員の活動の場は質・量ともに大幅に増加する。それまでは、限られた予算と人材の中で、いかに効果的に、安全に福祉用具を導入するか、アフターケアも含めて、腕のふるいどころといったところだろうか。

 
現行制度の盲点 居住形施設への貸与
小島 操(こじま・みさお)氏
石神井訪問看護ステーション主任介護
支援専門員。
「福祉用具専門相談員の方には、サービス担当者会議に『自分たちこそ出るべきなんだ』くらいの主張をしていただきたいですね」 助川未枝保(すけがわ・みしほ)氏
特別養護老人ホーム じょうもんの郷施設長。
「利用者の周辺の“介護力”を含めたアセスメントを行い、福祉用具を効果的に導入して初めて、介護のマンパワーが効率よく使えます」金沢善智(かなざわ・よしのり)氏
(株)バリオン介護環境研究所所長。
「目標をもって選定理由を示し、その結果から反省したり喜びを感じたりする。モニタリングがプロを育てます」

「福祉用具のプロが福祉用具のことを知っているのは当たり前。使う側である利用者のことをきっちり評価できる目を持ってこそプロなんだということを自覚してほしい」と金沢氏。少々厳しい意見のようだが、専門性の高さとその自覚は軽視できない問題だ。

利用者の生活をイメージし、評価するという視点が欠けていては、適切な機種選定などできない。居宅サービス計画から、ケアマネジャーや利用者、家族の意向や方針を読み取り、そのニーズや生活を困難にしている問題点に対して、福祉用具でどう対応するのかという目標を立てる。これには、評価する目と知識、適切な表現で伝える技量が必要だ。そのうえで、情報収集等も怠らない。そこで初めて、利用者にとって適切な提案とわかりやすい説明が実現する。 

「介護サービスの提供には、利用者にかかわる人たちの知識と技術の向上、それによって生まれるチームワークが不可欠」と主張するのは小島氏だ。サービス担当者会議の際に、サービススタッフ全員で共有すべき福祉用具の使い方や留意点等の情報を、わかりやすく説明するのは福祉用具専門相談員の役目だ。看護師など医療系の専門職であっても、福祉用具について詳しい知識を持っているとは限らない。新しい用具だとわからないことも多いし、安全性についてはいうまでもない。「“ベッドを運んで来た人”ではだめ。“セッティングをし、安全性を確認し、あなたの生活のこの目標のためにこの用具をこのように使ってもらいたいと計画している専門職です”と」(小島氏)。専門職が自分が何をする(してあげられる)人間なのかということをはっきり示すことは、利用者の安心と信頼にもつながる。

福祉用具専門相談員を含む関連専門職のチームワークをもってこそ良い支援が生まれる。サービスの提供全般にわたり福祉用具専門相談員が加わることで、福祉用具サービスの質の向上が可能となるだろう。

編集協力:(株)東京コア

 
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