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バリアフリー2010 〜 4月15日、16日、17日 “モニタリングシート” 標準様式を発表 福祉用具個別援助計画書とともに…福祉用具供給における必須アイテム
4月15日(木)〜17日(土)に開催されたバリアフリー2010で、福祉用具個別援助計画書、「ふくせんモニタリングシート」が発表された。昨年開発された福祉用具個別援助計画書は、福祉用具専門相談員がその専門性を発揮できるツールとして、すでに多くの現場で取り入れられている。
2012年度に制度改正を控えた介護・福祉業界では、福祉用具の給付方法の見直し論議が本格化されるとともに、福祉用具専門相談員の能力や技術への関心が高まりつつある。市場ニーズを確実にとらえ、応えるためにはどのようにすればいいか、さらには専門職として何が必要かを見直す好機でもある。
 
シンポジウム
 
あなたは勝ち残れるか! 福祉用具専門相談員、選別の時代

昨年4月に発表された福祉用具個別援助計画書。さっそく実務に取り入れているところもあり、各地で開かれたワークショップへの参加状況をみると、その推進状況はまず順調であるといえるだろう。一連の過程で、「計画の後の工程、モニタリングについては?」との意見が続出。ふくせんでは、それを受けて検討委員会による協議を重ね、モニタリングシートを開発した。

 
個別援助計画の次のステップ ―― モニタリングシート
白澤政和氏コーディネーター 白澤政和氏
大阪市立大学大学院生活科学部教授。日本在宅ケア学会理事、日本ケアマネジメント学会理事など公職等も多数務める

「個別援助計画書標準様式と必ず対で使用するもの」(東畠氏)が前提となっているこのモニタリングシートは、じつに効率的なつくりになっている。利用者の基本情報については、個別援助計画書の基本部分に記入欄があるので、モニタリングシートではかなり省略してある。主に“日常生活の中の福祉用具”という観点で利用目標を検証できるよう、変化の有無、利用してみてどうであったか、新たなニーズの発生などについてチェック、記入していく。モニタリングの結果、必要ならば再アセスメント、個別援助計画書の再作成となるので、アセスメント項目は設けていない。

ここで特に注目したい項目は“変化”である。“身体状況” “生活状況” “お気持ち” “ご家族の状況”について、変化の有無およびその内容を記載していく。

岩元文雄氏岩元文雄氏
(株)カクイックスウィング代表取締役社長

「福祉用具の貸与には“変化”がつきもの。ご利用者さんの状況の変化、用具自体の物質的な変化。以前から、福祉用具貸与については、貸しっぱなしでいいわけがないよね、といってはいました。いわゆるアフターサービス、アフターメンテナンスを含めたフォロー体制について問題意識はあったのです」とは、福祉用具の営業や福祉用専門相談員として現場を経験してきた岩元氏。導入した福祉用具がきちんと使えているか、については担当者として当然気をつけなければいけないところだが、利用者の状態、気持ちなども考慮にいれて、現場でのジャッジをくだす、それが福祉用具専門相談員が行うモニタリングなのである。

「福祉用具専門相談員は単なる福祉用具の運び屋ではありません。きちんとモニタリングをして継続的にサービスを提供する、介護サービス事業者として重要な役割を担っているのです」(白澤氏)

 
書面化の意味と効果
東畠弘子氏東畠弘子氏
福祉ジャーナリスト、医療福祉経営学博士

では、モニタリング結果をわざわざ書面化するのはなぜだろうか。当然時間も手間もかかる。項目を組み立てた東畠氏によると「いくら丁寧に情報交換をし、口頭でケアマネジャーさんに報告してくださったりしても、紙におとしたものがなければ情報の共有化はできないのです。そしてそれにもとづく議論も提案もできません。さらに重要なのは、“確かに私がモニタリングをしました”と、ご利用者さんやご家族にお伝えし、お渡しすること。ケアマネジャーとの連携だけではなく、利用者やご家族に対するアカウンタビリティ(説明責任)をはたすという目的をもクリアすることができます」

利用計画をたて、ケアマネジャーには書面を渡しているが、利用者やその家族には渡していないところも多くみられる。事業者としてだれを大事にするのか(気持ちのうえでワークフローのなかで)、個別援助計画書とこのモニタリングシートとで、改めて確認できるのではないだろうか。

 
ケアマネが一緒に仕事をしたいのは?
三浦浩史氏三浦浩史氏
介護支援専門員。(福)白寿会の理学療法士、在宅部ディレクター

「ご利用者さんのことをトータルで考えてくれる人。介護保険の枠にとらわれないで、利用者のニーズを第一に考えてほしいですね。住宅改修の相談にはのれるけれども、補聴器が必要だといわれた時に、それは担当分野外なので…というような方には依頼したくないですね。介護保険以外のことでも知識としてはある程度もっていて、ご助言ができる、そんな専門相談員だといいですね」(三浦氏)。ケアマネと福祉用具専門相談員とで、立場に上下があるわけではないが、われわれの仕事の多くは、ケアプランのなかに位置づけられる福祉用具利用の目的にそって福祉用具を提供していくことである。利用者およびケアマネジャーに、この人に助言してほしい、議論に加わってほしい、担当してほしいと思われることは「勝ち残る」要素である。

 
「最後に選定するのは利用者」利用者に選ばれる福祉用具専門相談員とは?
加島守加島守氏
高齢者生活福祉研究所所長

事例検討会の講師も務め、モニタリングシートの開発にも携わった加島氏は「モニタリングをとおして、利用者さんに選ばれる福祉用具専門相談員になってください」という。

利用者に選ばれるのはなんといっても“信頼できる福祉用具専門相談員”。利用者に対して「困っていることはありませんか?」「いいえ」で終わってしまうような質問のしかたをしていないだろうか。これは聞く方は楽だが、良い聞き方とはいえない。聞き方は、有効なモニタリングのポイントのひとつ。利用者の生活スタイルを知り、それを考慮したうえで細かい調整を重ねる。客観的に、また個人の性格までふまえて、高さや角度など細かいところにも注目して再調整し、アセスメントにつなげる。そういったひろい視野、専門的なとらえ方ができれば、ニーズの正確な把握、対応も可能となる。それが利用者にとっての“わかってくれている”“自分の要求をかなえてくれる”福祉用具専門相談員の条件なのではないだろうか。

 
完成したPDCAサイクル
PDCAサイクル

これまで、福祉用具においてはPDCAサイクルができていなかった。「C」の部分、“状況確認”が欠けていたのである。モニタリングシートの開発はここで大きな意味を果たしている。

「昨年の個別援助計画によって「P」の部分、計画ができました。このモニタリングシートを加えることで、これまでできていなかったPDCAサイクルをまわしていきたい、それが標準様式開発に込めたわれわれの想いです」(東畠氏)

1年たって…個別援助計画書の反響 個別援助計画の導入で何が変わった?
これまでの事例検討会発表者へのアンケート
○ケアプランの方針を確認するようになった
○ご利用者さんの情報を聞くようになった
○身体状況と希望を結びつけて聞くようになった
○これまでより一層深くご利用者のことを考えるようになった大切なのは、計画書を書くことではなく、書くことによって、何が必要であったか深く考えること。全国共通のツールとして標準様式を使用することの意味は大きいですね。(東畠氏)

 
ワークショップ
 
福祉用具「モニタリング」がテーマ 公開事例検討会
2日目の様子2日目(講師は市川氏)の様子
講師のするどい“突っ込み”にも果敢に応戦

会期中、3日間にわたって「個別援助計画書」「モニタリングシート」を使用した公開事例検討会が行われた。昨年のイベント時に発表となった「個別援助計画書」は1年が経過した今、各現場でどんどん取り入れられている。福祉用具専門相談員として日々試行錯誤してきた発表者たちが、その成果を遺憾なく発揮。講師とのリアルなやりとりに会場に集まった聴講者も熱心に聴き入り、質問者も飛び出す活気あふれるワークショップとなった。

  • 15日
    講師・加島守氏 テーマ「在宅生活を続けていきたい」
  • 16日
    講師・市川洌氏 テーマ「身体に負担をかけない快適な自立生活を支援
  • 17日
    講師・金沢善智氏 テーマ「福祉用具を利用し安全な動作を確保・介助力の軽減」
細かく検討プロジェクターの映像で間取り図や具体的な記入例をチェックし、細かく検討(写真は3日目講師の金沢氏)2日目の様子連日定員オーバーとなり、資料を片手に立ったまま聴講する人の姿も(写真は2日目の様子)

1事例につき3人が「個別援助計画書」と「モニタリングシート」を作成して発表。その内容を講師のナビゲートにより、ともに検討、意見交換を行い、最後に事例提供者が実際に作成した内容を発表するというもの。発表者は、細かい点が不明なため、「この利用者は○○が○○であると仮定し、2Mベッドを選定した」というように各自で設定からつくってきている。仮定とはいえ、品目だけでなく機種の選定まで行うので、身体状況や疾病の症状に関する理解、商品知識ともに難易度はかなり高い。また書面の性格上、言葉の選び方、文章表現にも非常に気をつかったことだろう。

条件等からセオリーどおりに導いた答えも、実際は利用者の考え方や性格が影響して、講師がおどろくような結果であったと判明したり…。

ポイントは満載。自分ならばどう提案するか、どこに注意してモニタリングするか…1時間30分が非常に短く感じる内容となった。

★この事例検討会の内容は、後日小冊子としてご紹介いたします。ご期待ください。

ふくせん出展レポート
ふくせん出展レポート写真
  バリアフリー2010は、天候不良にもかかわらず、初日の午前中から好調な人出でした。
 ふくせんのブースでは、「個別援助計画書」「モニタリングシート」の配布、各種パンフレットの設置と、先日発売された『事例で理解する福祉用具個別援助計画書の書き方と記入例vol.1』(社会保険研究所刊・定価1500円)の展示即売を行いました。初日のシンポジウムや事例検討会の効果もあり、モニタリングシートについての問い合わせなど大盛況。4人から5人の体制で臨んだブース担当もうれしい悲鳴となりました。
 ご来訪いただいた皆さま、ありがとうございました。
 

編集協力:(株)東京コア

 
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