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協会の活動を業界スタンダードに! “制度”を牽引する専門家集団の地位確立に向けて
毎年恒例の国際福祉機器展が9月29日、30日、10月1日に開催された。会場は東京ビッグサイト(東京都江東区)。本会では、初日の29日に"ふくせん特別セミナー"を行った。講師はシルバー産業新聞編集長の安田勝紀氏。ジャーナリストの視点から、2012年に予定されている介護保険制度の見直しの中心となるテーマやその周辺事情について語っていただいた。
 
2012年度制度見直しの大きなテーマは“地域包括ケア”
会場の様子安田勝紀(やすだ・かつのり)氏プロフィール
株式会社シルバー産業新聞社編集長。1949年、奈良県生まれ。75年立命館法学部卒業、同年ドラッグマガジン入社。95年11月「シルバー産業新聞」を創刊。99年9月シルバー産業新聞社設立、同紙編集発行人として現在に至る。公職としては、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「福祉用具実用化推進事業」評価委員。テクノエイド協会「福祉用具臨床的評価事業」苦情処理・サーベイランス部会委員。福祉用具国民会議運営メンバー。

「介護保険制度がスタートして今日まで10年の間に、地域の中での事業者の確保や、福祉用具サービスの育成など基盤整備が図られ、日本全国どこへ行っても一定の基準を満たすサービスが受けられるようになった。とりわけ福祉用具に関しては、要介護高齢者400万人に対し、よくフォローできている」と語るのは、シルバー産業新聞編集長として介護業界の動向を見守ってきた安田勝紀氏だ。

しかし周知のとおり、今後の介護サービス必要量は増加していくが、昨年、東京都は施設拡充の緊急整備に着手した。約100万人いる75歳以上の高齢者が20年後には倍増し、年齢が高くなれば要介護度が高くなることから、今以上の介護サービスが必要になることが予想される。それに対し、“サービス提供者”の側はどうか。わが国における労働力人口が減少を続けている以上、マンパワーをつぎ込むという策だけでは必ず限界がくる。そこにある課題は、今後の介護サービスをどう組み立てていくべきかだ。

「要介護度が進んでいくと、各家庭での対応は難しくなります。要介護4では5割、要介護5では3人に2人が施設等(グループホームを含む)に入っています。これは現在の地域包括ケアでの対応の難しさを表しています。要介護度が高くなっても、独居や老老介護であっても、適切に福祉用具や住宅改修を活用して少しでも長い期間、在宅で暮らし続けられるようにすることが、福祉用具事業者として、もっとも考えなければならないテーマではないでしょうか」(同氏)。

ところが、今後の介護政策に影響を与える「地域包括ケア研究会報告書」では、福祉用具についてほとんど触れられておらず、ケアマネジメントの中に福祉用具をどのように組み込むかというテーマも出てこない、と安田氏は嘆く。

 
福祉用具個別援助計画書がもたらす可能性

福祉用具個別援助計画書の作成義務化については、2012年の制度改正に盛りこまれるのかどうか、大いに注目されるところだ。7月の福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会では、本会から出席した畔上加代子委員と東畠弘子委員が個別援助計画の導入について発表・報告をした。その後、各都道府県にいるブロック長、関係者を通じて、同計画書の普及・啓発を市町村に対して行っているところだ。

たとえば、福祉用具専門相談員が移動支援機器を選定する場合、そこには必ず理由がある。なぜ歩行器でなく車いすなのか。なぜその機種なのか。それを選んで何をどうしたいのか、それらを文書化するのが個別援助計画書だと考えれば、日頃福祉用具の選定にあたって行っていることをあえて書面にするだけの話だ。他の介護給付サービスではごく当たり前に行われている、サービスの計画的な提供に不可欠な作業である。

 「実際、12ある在宅サービスの中で9サービスには個別計画が義務づけられています。福祉用具についてもケアプランを軸として、“どういう用具をどのように使って目標となる生活を実現していくのか”という議論があってしかるべきなんです」(同氏)。福祉用具に関してはなぜ義務づけがなかったのか。制度設計当時、国としては、“福祉用具サービスの質の担保”は優先順位が上の方ではなかったのかもしれない。しかし、「福祉用具をもっと活用していけば、自立支援・介護負担軽減の有効な手段となりうる。そのためには自分たちがスキルアップしていかなければならない」という声が現場から上がってきたのが大きな力だと同氏はみている。

「個別援助計画の本質的な目的とはちょっと違うかもしれませんが、福祉用具の安全性が注目されるなか、利用者および家族、ケアマネジャーに対する、リスクマネジメントのツールとしての必要性もかなり高まっていると思います。しかし、実際問題として、適切な福祉用具、個別援助計画を立てるのはなかなか難しいことです。どの程度の個別援助計画を、どういう形でいつの時期に義務化していくのかということについては、これからの議論の問題だと思います。でも、すでに大きな可能性が出てきたということに変わりはありません」(同氏)。

 
次のステップは、はたして…

今、議論されているものに「主任福祉用具専門相談員の創設」があるという。現在福祉用具専門相談員として2年以上の実績と100時間の講習が必要な福祉用具プランナー((財)テクノエイド協会)。そのレベルの人を「主任福祉用具専門相談員」とする考え方である。「さらに、制度内の位置づけとして、それを管理者要件にする。今は誰でも管理者になれますが、主任福祉用具専門相談員でなければ管理者になれないようにするんです。それがなかったら事業所が開けませんから、業界全体の底上げになりますね」(同氏)。

 
さらなる充実と活動領域の拡大が専門性を高め社会的地位を確立する

去年から福祉用具の利用者に対する個別の介護給付費通知が一部の市町村で始まっている。一部の事業所でサービスに見合わない非常に高いレンタル価格(外れ値)を設定するなど不適正な給付の是正を視野に入れたものだ。給付の抑制は自治体側の緊急の政策課題となっているが、以前全国市長会では、レンタル価格の上限設定に対する議論があった。結局上限価格が公定価格になってしまうという危惧もあって、事業所によってバラツキがあるレンタル価格を平準化するという目的の給付費通知に結びついた。

福祉用具レンタル価格には“物の価格”の他“サービスの価格”も反映されている。しかし、同通知を受け取った利用者がこの点を理解するかというと疑問だ。事業者によって価格が違うことをはっきり理解し、サービスの内容と価格とを対比したうえで事業者を選ぶ、そのように利用者の判断を促していくことが必要であり、それにつながるような価格開示の仕方、情報提供の仕方を検討すべきと安田氏は講演をしめくくった。

初日から大忙し!“ふくせん”ブース
「個別援助計画書標準様式」や「モニタリングシート」を中心に展示した本会のブース。その内容等についての説明を求める来場者も多数

編集協力:(株)東京コア

 
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