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「福祉用具の日」記念イベント講演会&シンポジウム 全国福祉用具専門相談員協会 福祉住環境コーディネーター協会(FJC)共催 福祉用具サービスの質の向上に期待する人々の集い
10 月1日は「福祉用具の日」。創設から来年で10 年となる。しかし、開会にあたって山下会長が述べたとおり、住宅改修も含め福祉用具の環境整備における価値については、まだまだ社会的認識が低い。限られた財源の中で福祉用具の良さや国民が納得するに足りるだけの効果を最大限にアピールするために、「福祉用具の日」を通じた普及啓発活動は絶対に欠かせないものである。と同時に質の高いサービスを提供するためには提供側の努力も重要だ。FJC との共催で3 回目となる今回、「福祉用具の日」の趣旨を踏まえ、各出演者から、サービスの質の向上に向けた貴重な提言をいただいた。
 
「自立生活の維持と介護の継続を支援する『福祉用具』と『住宅改修』」〜まずは福祉住環境整備、そしてマンパワーへ〜 基調講演:(株)バリオン介護環境研究所所長 金沢善智氏

「自分が利用者の立場ならば、福祉用具などをあまり使わずにひとの手を借りるか、最大限に利用してできる限り自分でいろんなことをやる、どちらの生活がいいですか」と問うのは、(株)バリオン 介護環境研究所所長の金沢善智氏。おそらく多くの人が後者と答えるのではないだろうか。自分はそうだと同氏は言う。それでも足りない部分はもちろん「ありがとう」って言いながら手伝ってもらうが、福祉用具というのはそういう重要なツールなのだということを、利用者さんから習ったのだと。

 
福祉用具や住宅改修が利用者にもたらすメリット
金沢 善智氏▲金沢 善智(かなざわ よしのり)氏
株式会社バリオン 介護環境研究所所長 理学療法士を離職後、東京理科大学・同大学院にて建築学を修め、医療と建築の知識・経験をもとに、要介護者の福祉住環境の整備に取り組む。弘前大学医学部助教授、目白大学保健医療学部教授を経て現職。医学博士・全国福祉用具専門相談員協会理事・福祉住環境コーディネーター協会理事

「まずは福祉住環境整備、ここが重要です。福祉用具と住宅改修で、その方に最大限、まずは自立していただく。住環境を変えることによって、その方の身体能力のレベルを嵩上げしてしまうんです。そして、それでもできないことは、マンパワーに頼りましょう、そういう順序で私は考えています」(同氏)。簡単なことのようだが、本当に実感できるかというと実は難しい。金沢氏は3つの事例を紹介してくれた。

まず40代の主婦Aさん。関節リウマチのため、朝なかなか起き上がれないのを家族に理解してもらえず、つらい思いをしていた。まだ介護保険ができる前のことで、病気や症状に対しても福祉用具に対しても、今よりもっと知識が足りなかった。ところが、背上げができる2モーターベッドをすすめ、使い始めたところ、目が覚めてから起き上がれるまで1時間かかっていたのが、20分に短縮できたという。また、ベッド搬入時の担当者が関節リウマチの症状について説明してくれたため、家族の理解も得られたとのことだ。

次はパーキンソン病のBさん。薬が効いているときは歩けるが、効いていないと寝たきりになってしまう。昇降機能がついていないベッドだったため、介護者である奥様がひどい腰痛に悩まされていた。そこで、背上げ機能に加えて、立ち上がりの介助・介護に必要な高さ調節ができる2モーターベッドを入れたところ、奥様の介助がとても楽になったそうだ。

また、認知症のCさんは、重度ではなかったが、風邪を引いたのをきっかけに自分で立ち上がれなくなってしまった。布団だと介護が大変なので特殊寝台を入れたが、高さがあるため、目が覚めた時に横に布団を敷いて寝ている奥さんが見えなくなってしまった。その不安からか「夜間せん妄」が現れ、認知症が進んでしまった。そこで一番低くなる電動ベッドに変えたところ、横を見たとき奥さんが見える。するとその夜から、夜間せん妄という興奮状態がぴたっとなくなった。

いずれも、ちょっとした症状に対しても、利用者と向き合い、何が原因で何が必要なのか、きっちりサービスできるプロフェッショナルであれば、様々なことが解決できるという例である。

 
本当の“できる”を見極めるのがプロの仕事
小島 操氏

「“できる”という言葉はとても幅がひろい。そこを現場で、アセスメントできなければ」(同氏)。すごくがんばれば起き上がれる、階段も必死になれば上れるかもしれない。それを「できる」ととらえてよいのか。トイレに「行けた」らOKなのではなく、2回目でも3回目でも大丈夫なのか。「連続してずっと続く生活の中で、本当の意味で“できる”かどうかを見極める事に、われわれプロがアセスメントに入り、評価する意味がある」と同氏はいう。自分の目で判断できる“スキル”がなければできないことである。

 
福祉用具サービスの質の向上に不可欠なものとは シンポジウム◆コーディネーター東畠弘子氏
写真左から
東畠弘子(ひがしはたひろこ)氏
医療福祉経営学博士。本会理事
小島操(こじまみさお)氏
石神井訪問看護ステーション主任介護支援専門員
畔上加代子(あぜがみかよこ)氏
(株)エイゼット代表取締役。本会副会長
金沢 善智(かなざわよしのり)氏
(株)バリオン介護環境研究所所長。医学博士。本会理事
渡邉愼一(わたなべしんいち)氏
横浜市総合リハビリテーションセンター医療部理学・作業療法課長。本会理事

「福祉用具サービスの“質”とは何か。そして“質の向上”のためには誰が、何をすべきか。10月1日の“福祉用具の日”の記念シンポジウムとして、“質”をキーワードに一緒に考えてみたいと思います」(東畠氏)。

東畠弘子氏氏東畠 弘子(ひがしはた ひろこ)氏
医療福祉経営学博士。福祉用具と介護経営分野の研究とともに福祉ジャーナリストとして執筆・講演活動などをおこなう。事故やひやりはっとの第一人者。著書「活かそう、福祉用具のひやりはっと」(中央法規出版)ほか。全国福祉用具専門相談員協会理事・福祉住環境コーディネーター協会広報委員・在り方検討会委員
 
サービスの質を左右するポイント
小島 操氏▲小島 操(こじま みさお)氏
石神井訪問看護ステーション主任介護支援専門員。旧・東京都社会福祉総合センターに福祉用具を中心とする相談員として15年間勤務。平成12年より介護支援専門員として現事業所に勤務。福祉住環境コーディネーター2級

“質”の向上を語る上で、サービスを3つに分類したのは小島氏。それぞれを簡潔に表すと次のようになる。

@専門性を持つサービス…プロセスの妥当性。ここで基本になるのは“知識力”。ケアマネに指示された機種を持ってくるというのではなく、「福祉用具個別援助計画書」に表されるような、根拠を持ってサービスの提供にあたってほしい。

A利用者へのサービス…わかりやすくて丁寧な説明。利用者はその場では「わかった」と言っても実際はわかっていない事も多い。その利用者を見て判断してほしい。

Bマネジメント…利用者に対して複数がかかわる場合でも、ケアプランなどの情報の共有や役割分担など“何のために何をやるのか”把握してほしい。これらについてのポイントをさらにまとめるなら、

@誰がやってもブレない専門性、A信頼、B連携。そして、この3つがくずれた時にどうなるのか。

 「これらの質は、利用者の要求を満たすものとしてあります。そのため、信頼が失われたときに、事故が起こる。連携がなくなったときにそれぞれの関係がうまくいかなくなる。全体的な質の低下が起きるのだと思います」(小島氏)。

 
正確な情報収集にもとづいたリスク提案
畔上 加代子氏畔上 加代子(あぜがみ かよこ)氏
全国福祉用具専門相談員協会副会長。1988年千葉県初の在宅複合サービス会社コスモスライフケアを創設。2003年、潟Gイゼットを創立、代表取締役に就任。現在、ヒューマン・ケア・ネットワーク会長、千葉県在宅サービス事業者協議会会長、(社)日本福祉用具供給協会千葉ブロック長等、多数の公職を兼任邉 愼一氏渡邉 愼一(わたなべ しんいち)氏
横浜市総合リハビリテーションセンター医療部理学・作業療法課長。日本作業療法士会福祉用具部部長。元・厚生労働省老健局振興課福祉機器・住宅改修指導官。福祉住環境コーディネーター検定試験2級公式テキスト執筆

国際福祉機器展でも配布された『介護ベッドここが危ない!!』(医療介護ベッド安全普及協議会編)は、事故の原因や回避方法、注意点、新JIS規格などを図解でまとめたリーフレット。これに関連し、畔上氏は、「誤ったことが書かれている、というわけではない」としながらも、最後まで丁寧に読まないと、「今、使っているベッドは危険なのでは?」「新JIS規格のベッドに換えなければいけないのでは?」と思わせてしまう要素が含まれている、としている。福祉用具専門相談員として、ケアマネジャーや利用者が誤解をしないように正確に情報を収集し、説明することが必要であると言う。

「福祉用具だけにいえることではありませんが、ベスト、ベターはあっても、100%安全ということは難しいと思います。それについては関わる人が専門の知識をもってアドバイスし、適切な利用を支援することで、リスクを回避できるのです」(同氏)。

例えば、同リーフレットの図で、事故原因のひとつとして、着衣がベッドのグリップにひっかかる、という例をあげている。四季を通して着るものは変わるので、年に一回の訪問でこういう情報は取れない。ましてや老老介護であったり、認知症であったりとなると、着衣に関する注意点までを伝えるのは非常に困難といわざるをえない。本会が開発したモニタリングシート等を利用して継続的なモニタリングを実施することは大切。定期的に訪問することで福祉用具の利用状況をチェックし、その時々で必要な情報を提供し、リスク回避のための提案をする。何より、“利用者を不安にさせない”ところに専門職としての質が問われる、と畔上氏は福祉用具専門相談員に求められる資質を強調していた。

 
先生は利用者。向上心と“みる目”が大切

「福祉用具専門相談員は個別援助計画書を書けるのか、という話題が度々でますが、書けます。そんなに難しいことではありません。ただし、それなりの素養を身に付ける必要はあります」と語るのは金沢氏。医学分野に弱い、工学系はちょっと、という話も聞くが、わからない事は学べばいいというのが同氏の意見である。

先生は利用者であり、その利用者から学ぶべきことに気付ける、その視点をもてればいいだけ。どんどん学ぶことで、レベルアップして、どんどんサービスも向上していく。いわゆるクオリティーが上がる。「クオリティーという単語には“質の高さ”という意味もあるんです。そのクオリティーを追求すればいいだけの話です」(同氏)。

勉強をしていけばどんどん向上していく。それを一番評価してくれるのは、先生である利用者なのではないか。

「自分でチャレンジして自分から学ぶという姿勢が“クオリティー”にもっとも強く関係してくるんじゃないでしょうか」(同氏)。

 
“レンタル”制度を活かすのは福祉用具専門相談員

渡邉氏は、(社)日本福祉用具供給協会の「状態像に応じた福祉用具の交換利用効果に関する調査」(平成21年度)から、返却や貸与期間の分析結果等に基づいて、このように語った。

「調査結果に基づくヒアリングの結果からは、生活動作が向上することが予測・期待できる場合には、選定の時点の状態のみではなく、その先を見据えた福祉用具の導入を検討しているという回答が印象的でした」(同氏)。

利用者の将来の状態変化を見越して、福祉用具を選定している実態を評価。そして、これを可能とするため、サービス担当者会議に積極的に参加して、状態把握に努めている、状態が変化している利用者に対してはケアマネジャーと連携のうえで提案し効果をあげているという結果であったという。

「これらは日々の取り組みです。制度設計で福祉用具サービスにレンタル制度を採用した意味は、交換による効果・メリットにあるといってもよい。状態変化を特に意識しながら、サービス提供をしていってもらえればと思います」(同氏)。

編集協力:(株)東京コア

 
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