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第17回高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展 バリアフリー2011 イベントレポート

4月14日(木)〜16日(土)の3日間、インテックス大阪で「第17回高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展・バリアフリー2011」(主催:社会福祉法人大阪府社会福祉協議会、テレビ大阪)が開催された。3日間の来場者数が延べ9万名を超える大盛況となった。

全国福祉用具専門相談員協会(以下、ふくせん)は3日間のブース設置のほか、シンポジウムやワークショップを開催した。

ふくせんでは昨年から「福祉用具個別援助計画書」「モニタリングシート」の改訂作業を進めてきたが、今回のシンポジウムを改訂版の発表の場と位置づけ、会期中は、そのPRを中心に活動した。

 
ふくせんシンポジウム:「制度見直しの行方を見据え、次のステップに向けて! 〜“ケアマネジャーとの連携”福祉用具個別援助計画書を通じて
白澤 政和 氏コーディネーター白澤 政和 氏
桜美林大学大学院老年学研究科教授
「今回の地震で改めて福祉用具の大切さに気づかされた。福祉用具のあるべき姿を考えるシンポジウムにしたい」

福祉用具に携わる6人の有識者による「ふくせんシンポジウム」が開催されたのは、バリアフリー展初日の4月14日13時、会場はインテックス大阪の国際会議ホールである。当日は、司会の山本事務局長の呼びかけで3月11日に発生した東日本大震災の犠牲者を悼み30秒の黙祷を捧げた後、ふくせん理事の岩元文雄氏(株式会社カクイックス ウィング代表取締役社長)の開会挨拶で幕をあけた。

シンポジスト
シンポジスト (写真左から)
東畠 弘子氏  医療福祉経営学博士
金沢 善智氏  (株)バリオン介護環境研究所所長。医学博士
M田 和則氏  一般社団法人日本介護支援専門員協会副会長。社会福祉法人晋英栄福祉会理事長
浜田 博司氏  前神戸市保健福祉局高齢福祉部介護保険課長
畔上 加代子氏  (株)エイゼット代表取締役
山下 一平氏  (株)ヤマシタコーポレーション代表取締役社長
 
質の高いサービス 実現のポイントは“連携”

コーディネーターの白澤政和氏は、「福祉用具個別援助計画書の重要性を今一度確認、理解することが必要」と話す。そのうえで、ケアマネジャーと“連携”し、意見や情報をフィードバックし合うことが、ご利用者に対するサービスの質向上につながると指摘した。また、「福祉用具専門相談員に求められているサービスの質向上とともに課題である“質の評価”についても福祉用具個別援助計画書がポイントとなってくるのではないか」と述べ、議論を求めた。

 
利用者が福祉用具に期待する物その答えは福祉用具個別年所計画書に
東畠 弘子氏 ▲東畠 弘子氏

福祉用具個別援助計画書の開発からその後の普及・調査活動のキーマンである東畠弘子氏は、今回発表された「改訂版福祉用具個別援助計画書」および「改訂版モニタリングシート(訪問確認書)」の説明、紹介を行った。具体的な改訂内容の解説とともに両様式を作成することの意義、狙いを改めて話した。

「福祉用具の提供における個別援助計画書作成のメリットとして『可視化』することで見えてくるもの、があげられます。①記録することで第三者にも理解しやすく、担当者が交代してもサービスの継続がスムーズに、②選定理由が明確になるので、ご利用者の状態が変わった時に機種変更を提案しやすい(理解の助けにもなる)、③留意点を記載することが、取り扱いや事故防止に役立つ、④目標を立てることで達成度が検証できる、などです」(同氏)。

個別援助計画書作成時のアセスメントを通じ、利用者がどんな福祉用具を欲しているのか、何を期待しているのかがわかる。そして、モニタリングによってその経過、結果が明らかになる。これまでは個々の相談員のスキルによる格差が目立った“把握力” “提案力”。その底上げ・標準化をこの2枚のシートが可能にする。

さらに、改訂に際して行ったアンケート結果をみるとこの様式を作成・使用することが、ケアマネジャーとの連携強化やケアプランの理解、個々の意識改革やスキルアップにつながった例が多数認められているという。

 
“ご利用者の幸せ”には相談員のスキルアップが不可欠

「介護保険給付の内訳の中で、訪問介護、ケアマネジメント、福祉用具貸与と比べた場合に、福祉用具貸与は満足度が高い割に伸び悩んでいることがわかります。これは啓発不足、信用不足も原因の一つではないでしょうか」と疑問を呈するのは、金沢善智氏。

計画書の作成研修を行うと、計画書にはケアプランにはない貴重な情報があることがわかる。そしてその作成にあたっては、相談員としての独自のアセスメントと情報収集が必要であるうえに、ご利用者の状態によっても選定する用具が異なるため、それを自分の言葉で説明できるようにしなければならない。経験を積むだけではなく、研修などによるスキルアップが重要ということだ。

同氏は「ご利用者の幸せのため、またケアマネジャーのよきサポーターとなるため、相談員は積極的にスキルアップを目標とした研修をしましょう」と呼びかけた。

 
ケアマネジャーと福祉用具専門相談員双方のスキルアップが“質”向上のカギ
M田 和則氏▲M田 和則氏

M田和則氏は、介護支援専門員と福祉用具専門相談員との連携について言及した。ケアプラン・ケアマネジャーの質の向上も課題であると指摘する。

「どれだけその人にあった用具を選定できているか、その橋渡しができているか。また、“状態像”が把握できているかどうかは、ケアマネジャーにとっても重要であり、かつ課題でもあります」(同氏)。

「福祉用具個別援助計画書」「モニタリングシート」の周知・活用はケアマネジャーにとっても大きな意味をもつのである。

また同氏は、東日本大震災の災害本部を立ち上げた、その様子を話してくれた。

被災地では、「自宅で歩けていた人が、避難所に移って、歩くことはおろか立ち上がることさえできなくなった」例のほか、車いすとポータブルトイレが至急ほしいと個別にSOSの電話が入った例もあるという。

 
保険者の視点からの福祉用具個別年所計画書

保険者の立場からの意見を発表したのは、浜田博司氏。「計画書は保険者にとっても有用であり、法制化されれば保険者としても指導しやすくなります」と、計画書作成の取り組みに対する評価を述べた。

また、ご利用者はなぜその福祉用具が必要なのかがわかっていないことがある。計画書を作成することで、その説明および理解の助けになる。さらに、客観的に状況を把握できることが“気づき”(=ニーズの発見)につながり、目標設定を明確にすることが利用者の自立意欲につながる、などのメリットをあげた。

 
レンタル料の公表をめぐり明らかになった行政サイドとの認識のギャップ
畔上 加代子氏▲畔上 加代子氏

介護保険給付の適正化の一環で、福祉用具のレンタル料の公表が一部の市町村で実施される中、行政との意見交換をしたというのは畔上加代子氏。

「福祉用具サービスには、アセスメントやモニタリングなど専門性があることを市町村は認識していません。レンタル料は事業者ごとに差異があって当然」と指摘する。同氏によると、保険者は、福祉用具専門相談員が利用者宅でベッドの組み立てなどのセッティングまで行っていること、消毒など衛生面についてのメンテナンスを行っていること自体を知らないという。また、専門性が発揮されるべき分野と位置づけられているアセスメントやモニタリングについても、その認識すらないというのが実情。相談員のスキルアップは重要だが、一方で、その専門性を発揮できる場を確保するためには、行政の正しい理解を求める努力も必要なようだ。

 
超高齢社会にあってこそ大きな意味をもつ“自立生活を助ける”福祉用具
山下 一平氏▲山下 一平氏

「介護給付費通知はコストだけの通知。サービスの中身が違うことが全然知られていないのが現状」と同様に懸念を示したのは、山下一平氏。

同氏が憂慮するのは行政に対してだけではない。今後、福祉用具そのものの普及がとても重要な意味をもつという。

「我が国の高齢化はもうすぐ高齢化率25%を超えるまでに進行しています。さらに2055(平成67)年には40%を超えると推測されています」(同氏)。

急速な高齢化進行の中、“介護する側”の絶対的なマンパワー不足が危惧されるというのだ。「この時代にあってこそ自立支援に役立つ福祉用具を、関係者のみでなく一般の方々にも知ってほしいのです」(同氏)。

 

閉会の挨拶を務めたのは、ふくせん理事の酒井博人氏(綜合メディカル株式会社代表取締役社長)。「平成18年度のような困った介護保険制度改正にならないよう、立ち向かっていきましょう」と力強い言葉で締めくくった。

 
ふくせんワークショップ:全国各地の福祉用具専門相談員が事例を持ち寄り“公開事例検討会” 〜福祉用具個別年所計画書・モニタリングシートを使って〜

ふくせんではバリアフリー展開催中の3日間、「福祉用具個別援助計画書」(以下、計画書)と「モニタリングシート」を活用した公開事例検討会を行った。福祉用具援助技術で著名な講師のもと、福祉用具専門相談員がご利用者の最適な用具の選定や安全のサポートについて、意見を交換し合った。

東畠弘子氏氏
事例検討会の会場は3日間をとおして、開始時間前に座席がうまってしまう盛況ぶり。
各日、事例提供者からの資料①基本情報(利用者基本情報、相談内容、身体状況、課題、実際の対応など)、②居宅サービス計画書、③週間サービス計画表、④間取り図(ビフォー)をもとに、発表者が設定した状況等も交えながら、福祉用具個別援助計画書やモニタリングシートを作成する。講師と意見交換もしながら具体的かつ実践的なケース検討を行った。
(写真は1日目の様子)
 
1日目 テーマ:終末期を在宅で過ごす(講師:加島守 - 高齢者生活福祉研究所所長)
事例
利用者:女性 91歳 脳梗塞による右片麻痺
相談者:ケアマネジャー
主な内容:退院に際し、在宅で家族による介護をするための福祉用具の導入等について相談したい
加島 守氏▲加島 守氏

加島氏は主にモニタリングシートを活用した事例検討を行った。相談を受けた結果、特殊寝台、特殊寝台付属品(ベッドサイドレール、サイドテーブル)、床ずれ防止用具、車いす、体位変換器を導入し、その2週間後にご利用者をモニタリングしたと仮定。変化したこと(身体状況やお気持ち、生活状況、ご家族の状況など)や使用中に困ったこと、満足度などを予測してモニタリングシートを作成し、発表を行った。

3名の発表者は、各自の予測した設定に基づき、“利用福祉用具の見直しの必要性”があるかないか、それぞれの対応を発表した。その後、事例提供者が実際のモニタリング結果と対応について説明した。

加島氏は「専門職に問われるのは予測能力。プランニングの際から予測意識をもって提案し、モニタリングに取り組んでほしい」とし、データとしての情報やアセスメントの結果から、様々な可能性を予測して提案等を行うことの必要性を説いた。

事例提供者は中尾裕元氏(東京都)、発表者は肥後一也氏(宮崎県)、野村幸司氏(愛知県)、馬場幸一氏(兵庫県)。

 
2日目 テーマ:夫婦2人で安心して暮らせる環境整備(講師:金沢善智氏 - 株式会社バリオン介護環境研究所所長)
事例
利用者:男性 75歳 脳梗塞による左半身麻痺及び高次脳機能障害
相談者:ケアマネジャー
主な内容:退院後、リハビリも兼ねた安全な移動、腰痛の妻の介助負担軽減を考慮した福祉用具の導入等について相談したい
金沢 善智氏▲金沢 善智氏

金沢氏は福祉用具個別援助計画書の作成を中心とした事例検討を行った。

3名の発表者は、扉の変更など住宅改修も含めて、福祉用具の品目の決定、機種の選定までを行った。事例提供者が発表した実際の計画書も含めて様々な提案となったが、いずれも福祉用具利用目標や留意点など丁寧な内容だった。

金沢氏は、「どんな効用のある薬かわからなければ飲まないのと同様、どんな効果をもたらす福祉用具かわからなければ使わない。そのためにも計画書の作成は重要」であり、「モニタリングで不具合や希望の再確認をし、ご利用者に『いい人生になった』と言ってもらえたら相談員冥利につきる」と述べた。

事例提供者は住田秀孝氏(愛知県)、発表者は松ア理紗氏(茨城県)、坂部智子氏(兵庫県)、吉川真司氏(兵庫県)。

 
3日目 テーマ:移動経路の複雑な住環境を改善し自宅で生活したい(講師:市川洌氏 - 福祉技術研究所株式会社 代表)
事例
利用者:男性 68歳 脳梗塞による右半身麻痺
相談者:妻
主な内容:通所介護の夫婦で積極的に外出したいという意向がある。住宅改修もあわせ、安全で無理のない移動に配慮した福祉用具の導入等について相談したい
市川 洌氏
▲市川 洌 氏

市川氏は打ち合わせにない質問で、発表者にその場で考えさせることもしばしば。ご利用者の生活動作を追って位置関係やスペースの問題など具体的に切り込む。発表者も果敢に応戦するが、指摘を受け苦笑いで下を向いてしまう場面もみられた。

今回の発表では、生活動線上に扉が多いこと、その動線が複雑なことなどから、住宅改修をメインにご利用者のニーズ解決を考えた発表者が多かったが、市川氏からは「お金をかけすぎ。福祉用具専門相談員として福祉用具での解決を」との指摘もあった。

事例提供者は大森大輔氏(栃木県)、発表者は荒木直人氏(大阪府)、山根寿朗氏(大阪府)、尾野智亮氏(京都府)。

編集協力:(株)東京コア

 
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