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イベント速報!! 2011/6/18 ふくせん近畿支部研修開催 福祉用具個別援助計画作成の義務化に向けて

「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」において、厚生労働省は、「福祉用具個別援助計画」を指定基準に位置づける案を発表した。開始時期等は未定だが、2012 年4月から義務化ということも十分考えられる。今、必要なのは福祉用具個別援助計画作成の義務化に関する最新の状況理解と、計画作成についての基礎的技術の習得、個人あるいは事業所として、どんな準備をすべきかという課題整理である。そこで本会では、会員のみならず一般の福祉用具関係者にも対象を広げ、近畿圏で初の福祉用具個別援助計画書作成研修会を行った。

 
大阪ブロック長 酒井博人氏大阪ブロック長
酒井博人氏

開会の挨拶は、本会大阪ブロック長の酒井博人氏。88 名の受講者を前に、「近畿圏で初めての個別援助計画書の研修会ということもあって、募集定員をはるかに上回る問い合わせ、申し込みがあった。急遽会場を変更し、定員を当初の2 倍以上の90 名としたが、なお数十名については定員オーバーで断らなければならない状態だった。個別援助計画作成の義務化に向けて、さらなる研鑽を期待したい」と述べた。

研修参加者へのアンケート結果

 
福祉用具個別援助計画を取り巻く動向と今後の展望

本会では2009 年の「標準様式」の発表以来、福祉用具における個別援助計画の必要性を示し、同計画書の作成研修等を行うなど、普及に努めてきた。そしてそれは、福祉用具専門相談員の専門性の向上や社会的地位の確立とともに進んでいくものでもある。

白澤 政和 氏

厚生労働省は4 月25 日に開催された「福祉用具における保険給付の在り方に関する検討会」(以下、「在り方検」)で、同計画を指定基準に位置づける案を発表した。今後の議論にもよるが、2012年4 月からの義務化も十分考えられる。義務化が現実的になったことを受け、本会の活動もがぜん業界内で注目を集めている。

在り方検の3つの論点のうち、"論点3"の一部が「福祉用具による自立支援と福祉用具個別援助計画の作成」。福祉用具個別援助計画書のベースはケアプランである。介護保険によるサービスの中で、福祉用具貸与、居宅療養管理指導、訪問入浴以外は、ケアマネジャーが立てたケアプランに従い、個別援助計画書を作るというスキーム。福祉用具に関しては、専門職との連携をとったうえで、福祉用具専門相談員が個別援助計画を立てて計画書を作成する、というのが厚労省の意向である。

大阪ブロック長 酒井博人氏事務局長
山本一志氏

「個別援助計画書とモニタリングがそろって初めて福祉用具のPDCAサイクルが確立するのです。しかし、具体的な作業としては、メモをとり、ご利用者、ご家族、ケアマネジャーからヒアリングをし、その結果を具体的に落とし込んでいくだけ。現在の業務に新たにプラスしなければならないものではありません。皆さんが通常やっていることを体系づけ、確立するだけです」とは、本会の山本一志事務局長。この一連の業務を、より簡便で効率的にまとめ、可視化したものが「標準様式」である。エクセルデータでふくせんのHPからダウンロードできるため、カスタマイズも容易。ひと工夫を加えれば、各事業所により合った個別援助計画の立案・記録、モニタリング用紙ができる。

「ぜひ、今日のような機会に個別援助計画の立案、計画書の作成法を勉強し、実際に各事業所で役立ててください」(同氏)。

 
福祉用具個別援助計画作成演習(事例を通じて)グループワーク
作業療法士 淵上敬史氏作業療法士
淵上敬史氏

今回の研修会の目玉は、作業療法士の淵上敬史氏を指導役に迎えて行う、個別援助計画作成のグルーワークである。1 グループ6 人程度の参加者、協力者2 名( ご本人役1 名、ご家族・ケアマネジャー役1 名)で実施し、参加者の中から、司会進行役、書記1〜 2 名( 計画書作成、改修案、図面等)、発表者を決め、演習を行った。

設定

ご利用者A さんの老人保健施設退所に伴い、住環境の整備や福祉用具のレンタル等の相談にのってほしいと担当ケアマネジャーより依頼があった。ご本人の試験外泊時に行うサービス担当者会議に出席して、選定などアドバイスをお願いしたい。出席者は、ご本人、ご家族、ケアマネジャー、訪問介護責任者。

目的

事例を通じてご利用者に対するいろいろな改善策をグループで検討し、新たな気づきや情報を共有する。

グループワークの様子
進行
  • ①収集すべき情報についてもその場で意見を出し合う。
  • ②聞き方が悪いと答えられなかったり、ご本人が本当のことが言えなくなったりする場合があるため、単語のみの質問は控えるなど、実際の場面を想定し、言葉使いや表情、会話の内容等にも配慮して進行する。
  • ③福祉用具個別援助計画書を参加者全員が作成する。
  • ④基本情報の記載後、利用計画の生活全般の解決すべき課題(ニーズ)を検討し記載する。
  • ⑤住環境整備案や福祉用具利用目標についてもグループ内で検討して記入する。
  • ⑥住宅改修図面を使用し、自由な発想で意見交換を行う。
  • ⑦商品カタログありきではなく、何の動作を補うべきかなどを十分に話し合ってから、最後に選定するようにする。
  • ⑧個別援助計画書や図面を使用してまとめ、モニタリングシートを紹介する(時間の関係で、発表はグループごとに挙手をし、2グループが発表することに)。
整形疾患についての特別講義

グループワークに先立ち、20 分という短時間ではあったが、淵上敬史氏による整形疾患についての講義があった。

高齢になるとカルシウムの減少や、骨粗鬆症が多く見られることなどから、骨折を起こしやすくなる。転倒時の状況によって骨折個所は変わる。例えば、大腿骨頸部骨折は非常に多く、日本では毎年10 万人が受傷している。大腿骨頸部骨折の95%は転倒によるものであり、介護が必要になった方の10 人に1 人は転倒・骨折が原因である。

整形疾患についての講義

人工関節への手術が行われる事が多いが、認知症の状態によっては、手術ができない事もある。脱臼しやすく、靴下をはく時の姿勢や浴槽への出入りの時の姿勢などには特に配慮が必要である。座位や立ち上がりの自立は可能だが、座高35センチのシャワーイスからだと立ち上がれないといった状況もあるため、何センチなら立ち上がりができるのか、つかまればできるのかなど、セラピスト等にきちんと確認しなければならない。

≪グループワークの模様≫

グループごとに、配布された記載例について講師による解説後、検討をすすめていく。

講師を務めた淵上氏は、参加者がグループワークをすすめる中、会場をまわり、質問を受けたり、反対に問いかけたり。当日知り合ったメンバー同士ながら活気ある話し合いになった。

「事例に"Pトイレ"と書かれているように、つい略語を使ってしまう事も多いでしょうが、他の専門職やご本人にはわかりにくいこともあります。きちんと"ポータブルトイレ"と記載するよう心がけましょう」(淵上氏)。

*写真中一番手前各グループをまわりアドバイスをする淵上氏
淵上敬史氏による総括

重要なことは、個別援助計画書は何のために書くのか、ということです。義務化されたから作成するのではありません。計画書を書くこと自体に必死になり、利用者の姿が見えなくなってしまうようなことがあれば、本末転倒ともいえるでしょう。私たちは、ご利用者やご家族の望み・思いの実現という目的を忘れてはなりません。モニタリングシートも個別援助計画書もそのための"ツール"なのです。

「ご利用者が自分のことをストレートに伝えているか?」は、常に意識したいポイントです。表面上だけではないか? 隠されたニーズがあるのではないか? 言葉だけでなく、しぐさや表情から「聞き取る」「くみ取る」ことが必要。ご利用者さんがこう言ったから、ケアマネジャーがこう言ったから、ではなく、表面に現れた言葉などから、本当の気持ちを「読み取る」努力をしましょう。真摯に受け止め、傾聴する姿勢をもつ事です。

そういう態度があるかどうかが利用者から「この人には心を開ける」と思っていただけるかどうかにつながります。利用者あるいは家族から真のニーズを引き出して、個別援助計画の形にして提案する。個別援助計画書はそのためのツールなのです(淵上氏)。

*3つのグループから挙手があったが、時間の都合上2グループが、間取り図などを用いながら発表した。
最後に

当日の参加は88 名(グループ6 名× 15)であった。終了後、参加者からは次のような声が聞かれた。「個別援助計画がどんなものか、どういった書き方、内容なのかを知ることができた」「もっとじっくり検討する時間がほしかった」「ニーズや目標の記入方法のポイント等をもっと知りたい」

熱心に取り組む姿勢は、募集時の盛況さをそのまま映し出しているかのようで、次回を望む声が多かった。

また、現実的な問題として「現在担当している利用者約600 人分の計画書を4 人の所員で作成する事は時間的に厳しい」という声も。義務化に向けて具体策が必要な"今後の課題"であろう。

研修参加者へのアンケート結果
参加の目的
  • ① 個別援助計画書の義務化に備えて、自分の意志で参加した …… 42.4%
  • ② 個別援助計画書の義務化に備えて、事業所(又は法人)の指示で参加した …… 39.0%
  • ③ 義務化とは関係なく、個別援助計画書の作成に関心があるので参加した …… 8.5%
  • ④ 知人や関係者からの勧めで参加した5.1%
  • ⑤ 無回答 …… 5.0%
研修成果の活用
  • ① 所属先の他の職員の研修やレクチャー等に活用する …… 27.3%
  • ② 地域における同業者や同業種の団体等のレクチャー、 研修等に活用する …… 4.5%
  • ③ 所属先の経営者、管理者等へのレクチャー等に活用 する …… 7.3%
  • ④ 所属先の経営者、管理者と共に計画作成の実行体制 の検討に活用する …… 18.2%
  • ⑤ 所属先の事業所や法人の独自の様式の開発等に活用 する …… 8.2%
  • ⑥ 法人、事業所内で運用する作成支援システム等の開 発に活用する …… 8.2%
  • ⑦ 法人、事業所内で既に運用している業務システム等 の改修に活用する …… 7.3%
  • ⑧ 所属の事業所では行っていないが、個人として計画 作成するために活用する …… 3.6%
  • ⑨ 販売用の業務システムの開発や、 事業所へのコンサルティングに活 用する …… 1.8%
  • ⑩ 新規に事業所を開設するために 活用する …… 0.9%
  • ⑪ 無回答 …… 12.7%
現在の個別援助計画書作成の状況
  • ① 所属の法人全体として作成している
     …… 10.2%
  • ② 法人全体ではないが、所属する事業所として作成し ている …… 8.5%
  • ③ 所属する法人、事業所では一律に作成していないが、 個人又はグループとして作成している
     …… 15.3%
  • ④ 作成していない …… 37.3%
  • ⑤ 無回答 …… 28.7%

編集協力:(株)東京コア

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