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国際福祉機器展(H.C.R.)2011 注目の「福祉用具個別援助計画」 恒例のワークショップテーマは「福祉用具の適切な利用支援と事故予防」

2011年10月5〜7日、国際福祉機器展(H.C.R.) 2011 が東京ビックサイト(東京都江東区)で開催された。本会は「福祉用具個別援助計画書」「モニタリングシート」のふくせん標準様式の展示を中心としたブースを出展した。ワークショップでは公費助成で行っている「福祉用具の事故防止を視点とした技術・連携研修事業」の委員5名を指定し、「福祉用具の適切な利用支援と事故予防」というテーマでパネルディスカッションを開催。理学療法士、介護福祉士、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、特別養護老人ホーム施設長、それぞれの立場からみた福祉用具の安全な利用について、意見を聞いた。

 
生活を変え得る福祉用具の“チカラ” 関連職全員でバックアップ
阿部勉氏阿部 勉氏
(あべ・つとむ)
健康科学博士、理学療法士。植草学園大学保健医療学部専任講師

阿部氏が語る、事故を防ぐ3つのポイントとは何か?

①アセスメント(適切な評価。その方の心身の状態に対し、どういった福祉用具が必要なのか)、②メンテナンス(効率よく使い続けるため、長期的に関わっていかなければならないこと)、③モニタリング(劣化、変化していく用具への対処)である。これらは物的なことだけではなく、ハード・ソフト両方において支援していかなければならないものであり、三位一体で行って初めて、効率のよい事故防止が実現する。

阿部氏はセラピストとして訪問しているご利用者宅で、まず“スピーディーな導入”に驚いたという。歩行器を導入した頸椎損傷の患者さんなのだが、その介護プランにおいては、通院先のセラピストと相談したあとすぐにケアマネジャーが動き、福祉用具専門相談員がきて導入されるにいたった。

「私は週に1回うかがうのですが、前の週は何もなかったのに、次の週うかがったらすでに歩行器が導入されており、利用者さんは『生活が一変したよ』 と。20 年間、理学療法士をしていますが、そんな言葉を聞いたのは初めてでした。福祉用具のちからはすごい」(同氏)。

阿部氏のような“セラピスト”が在宅に訪問するケースはまだ少ない。セラピストという立場ではあるが、週または月に1回訪問するという状況下では、福祉用具についてのモニタリングはもちろんメンテナンスもできない。

「利用者さんの生活に最も近いところにいる介護職の方がモニタリングをし、福祉用具専門相談員の方がメンテナンスとアセスメントをするというのがやはり良いかたちだと思います。事故防止の点からも。アセスメントについては、われわれセラピストも連携することができるでしょう」(同氏)。

 
情報交換の仕組みづくりとともに“認識”の向上も
内田千恵子氏内田 千惠子氏
(うちだ・ちえこ)
介護福祉士。(社)日本介護福祉士会副会長。(株)あいゆうサポート代表取締役

「『福祉用具の安全』を考えるにあたり、現場の介護職の知識不足、注意不足が事故につながるのでは、と危惧しています」と語るのは内田氏。種類が増え、新しい機能の開発もすすむ昨今、ヘルパーがご利用者宅にうかがったら新しい福祉用具が増えていて、「これはいったいどうやって使うんだろう?」ということがあるのも事実だ。内田氏によると、ここには結構困難な事情が隠されている。「福祉用具については、事業所や施設がどのように認識しているかという点に格差があると感じます。積極的に利用しようというところは、研修会などにも参加しているでしょうが、そうでないところの介護職には、福祉用具に興味はあっても、実際にはよく分からない、という人たちが多く存在するのでは?」というのが同氏の意見だ。

また、「介護動作が楽になる福祉用具を知っていても、自分の手だけでやらないことに罪悪感を抱いたり、プロとして"手抜き"をしているのではないかと感じたり。介護職や施設等の福祉用具に対する認識がまだまだ低く、それが福祉用具を積極的に利用しようという気持ちに結びついていかないのではないでしょうか」(同氏)。特に訪問介護の現場では、ヘルパーひとりだけのことが多い。サービス担当者会議で情報交換が行われていても、実際の担当ヘルパーが話を聞く機会がないこともあるという。そこで内田氏は次のように提案する。「福祉用具をどう使うのか、使うことでどう変わるのかなどを、福祉用具専門相談員の方に聞く機会があればいいですね。直接顔を会わせなくても情報交換ができ、もう少し連携できる仕組みがつくれたら。それが事故の予防にもつながるのではないでしょうか」(同氏)。

 
再認識を。福祉用具は24時間365日のサービス
小島操氏小島 操氏
(こじま・みさお)
結城クリニック石神井訪問看護ステーション相談室室長、主任介護支援専門相談員

在宅介護をされているお宅では、朝4時に起きるというケースはめずらしくはない。おむつ交換の心配だったり、経管栄養の1日分を落とし始める時間だったり。高齢者の方は比較的早起きなので、トイレにいく時間だったりもする。世間一般では、まだ布団の中にいる人が多いその時間、さぞかし静かだろうと思うが、エアマットは「シュー、シュー」と動いている(少し古い型の例えかもしれないが)。「福祉用具は24 時間365 日のサービスです。だからこそ、壊れては困る、故障しては困る、突然そこで動かなくなっては困る。それを扱い、深く関わる仕事であるということに、福祉用具専門相談員の方たちは誇りをもってほしいですね」(小島氏)。

日々の介護の中で「何かが変」と気づくのは、比較的頻繁に訪問してくれているヘルパーさんであることが多いという。

「この『何かが変』をもっと正確な情報として言語化して伝えること、そして、これらのヘルパーさんたちと福祉用具専門相談員の方たちがダイレクトに交流できる仕組みがぜひとも必要です」(同氏)。

 
リスクの共有・連携が「事故予防」のカギ
酒井博人氏酒井 博人氏
(さかい・ひろひと)
福祉用具専門相談員。本会理事。綜合メディカル株式会社代表取締役社長

福祉用具貸与事業所の役割は、適切な福祉用具を提供することによって、利用者の生活の自立、あるいは快適な暮らしを創出することである。

「しかし、これからは、福祉用具の安全な利用の確保が求められます。福祉用具の販売・レンタルでは、利用計画をたて、提供、モニタリングを経て、計画の見直しをする、このPDCA サイクルを確立することではじめて、われわれの仕事が完結するのではないでしょうか。事故の防止にも、このPDCA サイクルの実現は不可欠なのです」(酒井氏)。

福祉用具の事故で多いのは、電動ベッドのはさみこみや電動車いすの事故だ。最近よくニュースにもなっているが、これらは福祉用具専門相談員が定期的に訪問した際に、再度説明することによって、かなり防ぐことができる。しかしこれは、福祉用具専門相談員が6カ月に1度のモニタリングをしさえすれば、それで事故が防止できるという事ではない。福祉用具専門相談員とケアマネジャー、実際に使用の現場にいるヘルパー等が、その福祉用具を本当に理解し、リスクを共有することが、安全な福祉用具の利用要件なのだ。

酒井氏はヘルパーへの働きかけにも意欲を示す。「ヘルパー2級の資格取得時100 数時間のカリキュラムの中には、福祉用具についての講義は3〜4時間分しかありません。その短時間では現場で必要とされるレベルの理解は望めないのではないでしょうか。それでは在宅介護でわれわれが納品した福祉用具をヘルパーが使う場合に、どんなリスクがあるのかについてまでは、わからないことがあっても当然のことでしょう。それならば、われわれ福祉用具の専門職が説明すること、共に研修を行って学ぶことが、大きな意味をもつのではないでしょうか」(同氏)。

 
今後必要なチームケアの体制 ポイントは各職種の連携
助川未枝保氏助川 未枝保氏
(すけがわ・ みしほ)
特別養護老人ホームじょうもんの郷理事、施設長。(社)日本介護支援専門員協会副会長

「これからの在宅では、独居、認知症、認認介護、ターミナルの人たちが占める割合がますます増えてきます。その中での、安全・適切な福祉用具の提供、利用は、チームケアを用いなければ、なかなかできないのです」というのは、在宅介護、施設介護両方の経験をもつ助川氏だ。それを考えると、今回の福祉用具専門相談員とケアマネジャー、ヘルパーが合同で行う研修は大変的を射た計画である。

「自転車のハブだといわれているケアマネジャーと事業所。この2つはつながっていても、チームケアはなかなか進んでいないというのが現状です。サービス担当者会議の実施によって、かなり情報の共有ができるようになっていますが、どういうふうにサービス提供されているのか、必要な留意点は何かまでの連携にはまだいたっていないのではと感じています」(同氏)。「安全」を考えたとき、特に福祉用具がとりあげられるのは、即、事故につながるからである。特にハイリスクな状況の利用者のところでは、使用を誤ったときに何が起きるか、などのリスクの共有が大きな意味をもつ。

互いの職種の役割や責任分担を理解するという観点からも、職種別の研修ではない、合同の研修は大変有効であるし、その効果にも大きな期待が寄せられる。

事務局長 山本一志氏事務局長 山本一志氏
司会を務めた本会事務局長
山本 一志氏のコメント

福祉用具は24 時間365 日のサービスだから福祉用具専門相談員は誇りをもっていい、といっていただいたことは逆にいえば、それだけの責任がある仕事なのだということと私は受け止めました。またヘルパーさんと福祉用具専門相談員がダイレクトに意見交換ができるとよいということについては、まさにそのとおりで、今後の事業としてその仕組みづくりも必要だと痛感いたしました。

事業所による認識の格差、現場担当者が興味をもっていても、学ぶ場、情報交換をする場が少ない、という現実も明らかになりました。本会がこれから取り組むモデル事業では、福祉用具の事業者も介護事業者も、それぞれの地方で研修を積極的に行えるようなしかけづくりもしたいと考えており、そういった現実問題解決の一助になるのではないかと思います。

ふくせんブースの模様
2012 年4月からの「福祉用具個別援助計画」作成の義務化に備えた展示、紹介を行った。メインは、ふくせん標準様式の「福祉用具個別援助計画書」「モニタリングシート」のリーフレット等の配布と、その記載例のパネル展示。
初日の5日は、朝から悪天候だったにも関わらず、好調な人出だった。本会ブースでは、担当職員がパンフレット等の配布を行ったが、混雑の中、多くの来場者が受け取ってくれていた。 ふくせん出展ブース

編集協力:(株)東京コア

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